今年2025年も、終わりが近づいてきました。
年末年始、年の瀬から大晦日を経て年明けを迎えると
特別なすがすがしい気持ちになりますよね。
この不思議な感覚、決して気のせいではありません。
日本古来の信仰、文化にかかわる感覚です。
この記事で、年越しが私たちの心と体に与えるもの、
伝統の意味についてひもといてみます。
なぜ年を越すと心がリセットされるのか

新しい年がやってくる。
年一度のイベントの瞬間、多くの人がめでたく
高揚感を感じるのではないでしょうか。
日本人にとって正月は、単なる日付の切り替わりではなく、
人生における、大きな「通過儀礼」なのです。
年を越すことの意味

日本の正月文化は、古来からの信仰です。
正月は「年神さま」がやってきて、
人々に新しい年齢、魂を授けるとされていました。
新年を迎えると、万物に宿る霊力「年魂(としだま)」が
一つ増えると考えられていたのです。
旧年中に起きた良いことや嫌なことが、
12月31日の大晦日で解消され、すべて無しになり
新たにリセットされると考えられていました。
「年魂(としだま)」は、お年玉の由来でもあります。
お餅などを分け与える風習が、昭和の高度成長期ごろから
都市生活化によって、現金に変わっていったということです。
年神様を迎える清浄化

人々は年神さまからよい運気と幸運な運勢をいただくために、
12月半ば頃から大掃除をします。
心身を清め、12月26日から28日までには
正月を迎える準備を終わらせておくのが、
かつての日本の家庭の、伝統的な有りようでした。
大掃除は、神聖な存在を迎え入れるための儀式であり、
同時に、旧年のケガレをはらう行為でした。
そのため、家を清潔にすることで心身も一緒にリセットされる
という心理的な効果を感じる、とされます。
年魂とお米

さらに興味深いのが、食べ物を通じた変化です。
古来から日本は稲作を行い、お米には霊力(魂)が宿ると考えました。
元旦には餅をいれた雑煮を食べ、古い年魂の自分から
新しい年魂の自分へと、生まれ変わる意味があったのです。
年越しは、一つ年齢を重ねるというだけでなく、
お餅(米)を頂き、新しい自分に生まれ変わる体験でもあるのです。
年越しの食文化
年越しそば

江戸時代中期、江戸の町では毎月の末日に、
商人たちがそばを食べる風習がありました。
商いが無事に済んだことを祝う習慣で、年の最後の末日である
「大晦日」にも、そばを食べるようになりました。
長く細いそば。
長寿を願う意味以外にも、その年の厄、嫌なことを
切れやすいそばで断ち切るといった意味合いもあります。
そばは、古くは体内を清浄にし、五臓の毒を抜くと信じられていた食べ物です。
年越しそばを食べ、除夜の鐘で煩悩を払い、新年を迎えるわけです。
お正月料理(おせち)

おせち料理の歴史は古く、原型は弥生時代にあったとされます。
奈良時代には、朝廷内で「節会」として行われ、そこで供される
供物が「節供」と呼ばれていました。
平安時代からは、宮中の行事として定着。
江戸時代には民間でも、お正月の定番料理として
振る舞われるようになったといわれています。
おせち料理は、もともと神様に供える食膳でした。
かつて「喰積」という新年の儀礼的な祝い肴があり、
やがて現在の重箱に詰められたおせち料理になっていきました。
「喰積」は正月の季語で、おせちを指す言葉として使われます。
おせちには先人からのメッセージが隠されています。
昆布巻きは「喜ぶ」、黒豆は「健康」、数の子は「子孫繁栄」などです。
北海道や東北、九州などでは「年取り膳」と称して
おせちやごちそうを大晦日に食べる地域もあります。
新年を迎えるための準備
年末の大掃除

12月半ば頃から始まる大掃除は、旧年の穢(けが)れを払い、
年神さまをお迎えする、聖域化の儀式といえるかもしれません。
古い自分から新しい自分へ生まれ変わる心と体の準備です。
ただ近年は、年末に集中して行うと大変だということで
11月頃からなどから、少しずつ行うことも推奨されています。
門松やしめ飾りの準備

12月26日ごろから28日までに行う正月飾りの準備。
門松は、「常緑樹の松」という生命力を感じさせる植物で、
年神さまが訪れ滞在する依り代(よりしろ)とされています。
しめ飾りで玄関を飾り、神聖な場所であることを示し、
年神さまの来訪を静かに待つのです。
なんとなくおめでたい新年だから飾るわけではないのです。
心身の清浄・新年への向き合い方

年越しは、外的な準備と同時に、内面的な準備も重要です。
一年を振り返り、感謝の念を持ち、新年への願い・目標を決める。
大掃除、正月飾りを整え、年越しそば、おせちを食べる。
こうしたすべての行為を通じ、私たちは古い自分から
新しい自分へ生まれ変わる準備をしています。
清々しい気持ちで新年を迎えると、その一年もまた
清浄なものになっていくことでしょう。
まとめ

年を越すと心がリセットされる感覚は、
日本古来の信仰と文化に根ざしていることが分かります。
年末から年明けという日付の移り変わりだけでなく、
日本人のDNAに受け継がれた感覚なのかもしれません。
2026年、伝統の意味を思い出し
年越しやお正月を過ごしてみてはいかがでしょうか。
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