初夏の訪れとともに、気になるのが「土用の丑の日」
美味しい鰻を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
実は土用の丑の日に食べるものは、うなぎだけではないんです。
2025年の土用の丑の日がいつかや、由来、風習や禁忌、
東西の食文化、うなぎ以外は?など分かりやすく解説します。
土用の丑の日とは?基本知識を解説

2025年の土用の丑の日は
7月19日(土)と7月31日(木)です。
日本の夏を代表する風物詩のひとつです。
毎年、7月下旬から8月上旬にかけて訪れるこの日は、多くの日本人に
「うなぎ(鰻)を食べる日」として知られています。
しかし由来や意味、知られざる伝統について
詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
土用の丑の日・由来と意味

「土用」とは、中国の陰陽五行説にもとづく暦の考え方です。
春夏秋冬の四季、それぞれの終わりの約18日間を「土用」と呼び、
季節の変わり目をあらわしています。
1年に4回ある中で、一番日本人になじみ深いのが夏の土用で、
「立秋前の約18日間」がこれにあたります。
※2025年の立秋は8月7日(木)
「丑の日」の「丑」は、十二支の丑(うし)のことです。
昔の日本では、日にちを十二支で数えていたようです。
土用の期間中にある
丑の日が「土用の丑の日」となります。
年によって、丑の日が2回ある場合もあり、
「一の丑」「二の丑」と呼び分けます。
2025年は2回あるので、
7月19日が一の丑、7月31日が二の丑、ということです。
うなぎを食べる習慣の歴史

平賀源内と江戸時代の知恵
土用の丑の日にうなぎを食べる習慣は、江戸時代中期に定着したとされています。
最も有名な説は、エレキテルという静電気発生機を作ったことで有名な
蘭学者・平賀源内(1728~1780)が関わったというものです。
夏場は、客足が落ちるうなぎ屋の主人が源内に相談したところ、
源内は「本日丑の日」という看板を出すことを提案しました。
当時から「丑の日には『う』のつく食べ物を食べると縁起が良い」
という言い伝えがあり、この看板が大当たりし、他の店も
真似するようになったというのです。
うなぎの栄養価と夏バテ対策効果

うなぎが、夏の土用の丑の日に食べられるようになったのは、
単なる語呂合わせだけではありません。
うなぎには、夏バテ防止になる栄養が含まれています。
うなぎの主要栄養素と効果
- ビタミンA
疲労回復、免疫力向上、夏風邪予防 - ビタミンB1
疲労回復、食欲増進、夏バテ解消 - ビタミンB2
細胞の再生、皮膚・粘膜の健康維持 - ビタミンE
抗酸化作用、血行促進、夏の紫外線対策 - DHA・EPA
血液サラサラ効果、脳機能向上 - 良質なたんぱく質
体力維持、筋肉の修復
これらは暑い夏を乗り切るために必要な成分です。
昔の人々の知恵が、現代の栄養学でも裏づけられています。
土用の禁忌と伝統

土用期間中の禁忌事項
土用の期間は、陰陽五行説において「土」の気が盛んになる時期とされ、
土の神様が地上に出て活動すると考えられています。
昔から土用期間中は、以下の作業を避けるべきとされてきました。
土用期間中に避けるべき作業
- 土いじり、草むしり
- 地鎮祭、井戸掘り
- 増改築の基礎工事
- 引っ越し
- 新しい事業の開始
土の神様を刺激すると、災いが起きると信じられていたのです。
土用の間日(まび)とは

しかし、それでは日常生活に支障が出ます。
土用期間中に「土の気が休まる日」とされる特定の日が設けられました。
「土用の間日(まび)」です。
この日であれば、土を動かす作業を行っても差し支えないとされています。
間日の日付は年によって異なります。
2025年の夏の土用・間日は
7月21日(月)・7月22日(火)・7月26日(土)
・8月2日(土)・8月3日(日)
です。
土用期間の伝統的な風習・行事

土用干し(虫干し)
土用期間の晴れた日を選び、衣類や書籍、調度品などを
風通しのよい場所で陰干しする習慣です。
湿気が多く、カビや虫が発生しやすいこの時期、
大切なものを手入れし長持ちさせ、厄を払うという意味がありました。
「梅の土用干し」は現在でも行われており、梅干しを天日干しして
保存性を高める大切な作業として受け継がれています。
丑湯(うしゆ)

土用の丑の日に、菖蒲(しょうぶ)や
桃の葉など、薬草を入れたお風呂に入る風習です。
香りで邪気を払い、体を清めて無病息災を願います。
桃湯は、あせもなどに消炎作用があるといわれています。
桃湯を作るには、生の葉30~40枚を布袋に入れます。
鍋で15~20分煮だした後、汁ごと風呂に入れ入浴します。
(詳しくは専門家にご相談ください。)
きゅうり加持(きゅうり封じ)

一部の地域や寺院で行われる厄除けの行事です。
きゅうりに名前や経文などを書いてもらい、病気や災いの身代わりとして
土に埋めることで、病気平癒や無病息災を祈願します。
きゅうりが土に還る際に、厄災も一緒に消え去ると信じられています。
土用見舞い
夏の土用の期間は、暑さが厳しくなる頃です。
この時期、親しい人の健康を気遣う気持ちで訪ねたり
便りを送るのが「土用見舞い」で、「暑中見舞い」とほぼ同じです。
地域別うなぎの調理法、食文化

関東風vs関西風・うなぎの蒲焼き比較
日本全国で親しまれているうなぎの蒲焼きですが、
地域によって調理法に大きな違いがあります。
関東風(江戸焼き)の特徴
- 背開きで調理
- 一度蒸してから焼く
- ふっくらと柔らかい食感
- 武士の町である江戸で「腹を切る」ことを嫌ったことが由来
関西風の特徴
- 腹開きで調理
- 蒸さずにそのまま焼く
- 皮はパリッと香ばしく、身は弾力のある食感
- 「腹を割って話す」商人の町、大阪の文化を反映
その他、地域独自の食文化

- 中部地方
「ひつまぶし」として親しまれる - 九州
「せいろ蒸し」が有名 - 北海道
うなぎが獲れにくいため、サンマのかば焼きを食べることも
うなぎ以外の「う」のつく食べ物

土用の丑の日には、うなぎ以外にも
「う」のつく食べ物を食べる習慣があります。
代表的な「う」のつく食べ物
- 梅干し
疲労回復、食欲増進効果 - うどん
消化が良く、夏バテの栄養補給に最適 - 牛肉
たんぱく質とビタミンB群が豊富 - うり類(きゅうり、すいかなど)
水分補給と体温調節効果 - 土用餅
関西地方の伝統的な和菓子
現代の土用の丑の日

現代では、土用の丑の日は日本の重要な商業イベントの一つとなっています。
スーパーやデパート、専門店ではキャンペーンが行われ、
家庭でうなぎを楽しむため、ウナギのかば焼きの予約をする光景が見られます。
近年は天然うなぎの減少・価格上昇により、養殖うなぎが主流となっています。
持続可能性を考慮し、うなぎ以外の代替食品も注目されます。
土用の丑の日を健康的に過ごすコツ

土用の丑の日は、うなぎを食べるだけでなく、
季節の変わり目に、体調に気を配る機会でもあります。
夏を健康に過ごすためのポイント
- 栄養バランスの取れた食事を心がける
- 十分な水分補給を行う
- 適度に休息を取る
- 冷房の使いすぎに注意する
- 家族や友人と食事を楽しむ時間を作る
- 土用干しで身の回りを整理整頓する
- 薬湯(丑湯)でリラックスする
まとめ

土用の丑の日は、江戸時代から続く日本の伝統行事です。
うなぎを食べる習慣には、先人たちの生活の知恵、
季節の変化に対応する工夫がこめられています。
土用期間中の禁忌・間日、土用干しや丑湯といった風習は、
現代人にとっても、参考になる生活の知恵が詰まっています。
現代も、この伝統を大切にし、家族や大切な人と
夏の風物詩を楽しんでみてはいかがでしょうか。



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