梅雨の時期になると窓辺で見かける「てるてる坊主」
あなたも明日の晴れを願って作った経験がありますよね。
じつは奥深い歴史や言い伝えがあるのです。
てるてる坊主の由来や作り方、飾り方、役目を終えた後の処分、
知っているようで知らなかった豆知識を分かりやすくご紹介します。
てるてる坊主の起源は中国の少女だった?

てるてる坊主のルーツは、中国から伝わった
「掃晴娘(そうせいじょう/サオチンニャン)」
という風習にある説が有力です。
掃晴娘は、箒(ほうき)を手にした少女の形をした紙人形です。
箒で雨雲を払い、晴天をもたらすと信じられていました。
ある村が大雨で困っていた時、晴娘(チンニャン)という美しい少女が
自らを犠牲にして龍神に嫁ぎ、村に晴天を取り戻した、
という悲しい伝説が元になっています。
人々は彼女を偲び、晴れを願う際に
「掃晴娘」を軒先に吊るすようになったのです。
平安時代に日本に伝わり、江戸時代には広く普及しました。
日本に伝わる過程で、天候の祈祷を行っていた
「坊主(僧侶)」や「修験者」の姿と結びつき、
中国の女性の人形から変化したとされています。
当初は「照り照り法師」や「照る照る法師」と呼ばれており、
現在の「てるてる坊主」の呼び名に変化していきました。
てるてる坊主の作り方

てるてる坊主は、ティッシュや布などで作ります。
【用意するもの】
- ティッシュ 2~3枚(または白い布など)
- 輪ゴムやヒモ 1本
- つるすためのヒモ 1本
【作り方】
- ティッシュ1枚を丸め、頭を作ります。
- もう1枚のティッシュを広げ、中央に作った頭を置きます。
- 頭をつつむようにまとめ、首の部分を輪ゴムやひもでしっかりと結びます。
- つるすヒモを、首の部分に取り付ければ完成です。
ポイント
きれいに作るコツは、頭を少し大きめに作り、首の部分をかたく結ぶことです。
頭がたれ下がらず、バランスのよい形になります。
願いが叶う?正しい飾り方と歌の秘密
てるてる坊主の飾り方にもポイントがあります。
飾るタイミングと場所
てるてる坊主は「明日の天気」を願うものなので、
晴れてほしい日の前日に飾ります。
飾る場所は、太陽の光が当たりやすい、南向きが良いとされます。
昔から軒先に吊るされることが多く、風通しの良い場所が好ましいです。
顔はいつ描く?
てるてる坊主は、顔を描かずに飾るのが正式な方法です。
願いを込めて吊るし、晴れたら感謝の気持ちをこめて顔を描き入れます。
先に顔を描いてしまうと雨でインクがにじみ、涙を流しているように見え、
雨を降らせてしまうという言い伝えもあります。
おなじみの歌と意味

「てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ〜♪」という歌は、
大正時代(1921年)の浅原鏡村(浅原六朗)作詞、
中山晋平作曲で作られた童謡です。
作詞者の浅原鏡村は、長野県池田町出身で、
現在同町には「てるてる坊主の館(浅原六朗文学記念館)」があります。
晴れたらご褒美に「金の鈴」や「甘いお酒」をあげる
という内容が含まれ、てるてる坊主を神様のように
敬う気持ちがあらわれています。
3番は怖い?
あまり歌われない3番の歌詞には
「それでも曇って泣いたなら そなたの首をチョンと切るぞ」という
物騒な一節も存在します。
これは、単なる残酷な脅しではなく、当時の子供たちが
本気で晴天を願う気持ちの表れと考えられています。
思いつく最大限の褒賞が「金の鈴」や「甘いお酒」であり、
最大限の罰が「首を切る」だったのではないかという解釈もあります。
現代では、この内容が残酷だとして省略されることが多いです。
役目を終えたてるてる坊主の処分

てるてる坊主を飾りっぱなしにするのは避けましょう。
役目を終えたてるてる坊主は、感謝の気持ちを込めて
丁寧に処分することが大切です。
- 晴れた場合
感謝を込めて顔を描き入れ、お神酒(お酒)を供えてから処分します。 - 雨だった場合
顔は描かずに、静かに処分します。
江戸時代の文献『嬉遊笑覧』には、
願いが叶った後は顔を描いて神酒を供え、川に流すと記されています。
現代では環境への配慮から、
白い紙に包んで可燃ごみとして出すのが適切です。
他のゴミと混ぜず、感謝の気持ちを伝えてから手放します。
てるてる坊主の歴史

江戸時代には、てるてる坊主は布製ではなく、
主に和紙を使った、折り紙のような形で作られていました。
呼び名も「てり雛」「てり法師」「てりてり坊主」
「てるてる法師」「てれてれ法師」など、
さまざまな呼び方で親しまれていました。
明治時代になると、布やティッシュペーパーで
作る形が一般的になり、昭和の童謡の普及とともに広まりました。
まとめ

可愛らしい飾りに見えるてるてる坊主には、
天候を案じ、晴れの日を心待ちにする人々の願いが込められています。
中国の悲しい伝説から始まり、日本独自の文化として発展してきた
この風習は、現代でも多くの人に愛されています。
背景にある物語や正しい作法を知ることで、
一層心を込めて、願いを託すことができます。
技術が発達した現代においても、
自然への祈りを込めた風習は、私たちに大切なことを
教えてくれているのかもしれません。
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