重陽の節句(菊の節句)とは

重陽の節句は、本来は旧暦の9月9日に行われる五節句の一つです。

重陽の読み方は「ちょうよう」です。

中国から伝わったこの行事は、菊の花を用いて不老長寿を願うもので
菊の節句とも呼ばれます。
現在はあまり馴染みがありませんが、菊酒や菊湯などの風習があります。

重陽の節句に関係する食文化や祭りも全国各地に残っています。
今回は重陽の節句の由来や意味、過ごし方や行事食などを紹介します。

重陽の節句とは？由来と意味
重陽の節句の過ごし方・食べ物
おわりに
1. 関連

重陽の節句とは？由来と意味

重陽の節句とは、陰陽思想において奇数を陽数と呼び縁起がよいとされることから、
陽数の極である9が重なる日を祝う行事です。

中国では後漢（西暦25年）以前から文献に見られる歴史ある祝日であり、
邪気を払い長寿を願って菊の花を飾ったり、
菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わしたりしていました。

また呉茱萸（ゴシュユ）の実を入れた袋を肘に下げたり、
郊外の丘など高い場所へピクニックに出掛け遠くを見ること（登高）も行われました。

平安時代に日本に伝わり、旧暦の9月9日は菊が咲く季節であったことから、
菊の節句とも呼ばれるようになりました。

ただ、陽の数が重なり力が強すぎて逆に不吉とも言われたため、邪気を払う行事とともされます。
菊は邪気を払う力を持つ霊草と信じられ、重陽の節句には菊の花を観賞し、
菊酒や菊湯で無病息災や不老長寿を願いました。

菊に綿を被せておき、そこに溜まった夜露で肌を拭くと若さを保つことができる
という言い伝えもありました。

しかし明治初期に旧暦から新暦へ改暦されたことで、重陽の節句は季節感を失います。

新暦の9月9日はまだ菊の見頃には早かったり、残暑が厳しくもあり
重陽の節句は次第に廃れてしまいました。

重陽の節句の過ごし方・食べ物

現在、重陽の節句はあまり一般の人々に知られていませんが
面影を残す行事や食文化はいくつかあります。

行事食・食べ物

栗ごはん
秋の味覚の代表格である栗を使ったご飯です。
栗は8月中旬ごろから出回り始めるため、9月9日に栗ごはんを楽しむことも可能です。
栗ごはんを食べる風習は江戸時代から始まったとされており、庶民の間では重陽の節句を「栗の節句」とも呼んでいました。
秋茄子
秋に収穫される茄子は、春に収穫される茄子よりも甘みが強く肉厚で美味しいとされています。
重陽の節句に秋茄子を食べるという風習は、江戸時代からあったといわれています。
旧暦の重陽の節句は、現在の10月初旬頃だったため秋茄子を重陽の節句に食べるというのは理にかなっています。
現在の重陽の節句は9月9日のため、秋茄子というよりは夏茄子になります。
祝膳
重陽の節句は大人の女性の健康や長寿を願う節句であるため「大人のひな祭り」とも呼ばれています。
そのため女性が好むような色鮮やかで華やかな料理を用意することもあります。
菊の花びらを散らしたちらし寿司や、菊の花を模した麩菓子や羊羹などです。
食用菊
菊は観賞用だけでなく、食用にもなります。菊の花びらや葉はサラダや和え物、天ぷらなどにして食べられます。
菊には高い殺菌・解毒作用があり、刺身に添えられることもあります。
また菊の花びらを砂糖漬けにしたり、ジャムやシロップにしたりすることもできます。

菊の着せ綿

菊に綿を被せておき、そこに溜まった夜露で肌を拭くと若さを保つことができる
という言い伝えがあります。
この「着せ綿」は、この時期の和菓子の題材として知られており
季節感を大切にする茶席で好まれます。

おはようございます☁️
本日はお天気が不安定な予報ですのでお気をつけてお出かけくださいね
只今お店では重陽の節句にちなんだお菓子をご用意しております🥰

【重陽とは】陰陽思想では偶数は陰、奇数は陽の数とされており、陽数の極である『9』という数字が重なる日というところからきています pic.twitter.com/eQneuev0U1

— 川口屋趣味の和菓子名古屋【公式】 (@kawaguchiya_758) September 4, 2023

菊湯・菊枕

菊湯は、湯船に菊を浮かべて入ることです。

菊には殺菌・解毒作用があるだけでなく、血行促進やリラックス効果もあります。

菊枕は枕に菊の花びらや葉を入れて寝ることです。
目や頭痛の緩和効果があるとされています。

後の雛(のちのひな)

重陽の節句は大人の女性のひな祭りともいわれ、
後の雛（秋の雛・菊雛）という風習が江戸時代にありました。

桃の節句（雛祭り）で飾った雛人形を半年後、重陽の節句で再び飾り、
健康や長寿や厄除けなどを願うものです。
ひな人形を半年ぶりに出して虫干しする意味もありました。

現在でも一部の地域で行われています。