重陽の節句は、
旧暦の9月9日に行われる五節句の最後の行事です。
重陽の読み方は「ちょうよう」です。
中国から伝わったこの行事は、菊の花を用いて不老長寿を願うもので
菊の節句とも呼ばれます。
重陽の節句の由来や意味、過ごし方や行事食を紹介します。
2024年重陽の節句はいつ?
2024年(令和6年)は9月9日(月)です。
重陽の節句とは?
重陽の節句とは、もともと中国から伝わった行事です。
陰陽思想で奇数を陽数と呼び、縁起がよいとされることから、
陽数の最大である9が重なる日(9月9日)を祝う行事です。
中国では後漢(西暦25年)以前から文献に見られ
邪気を払い長寿を願って菊の花を飾ったり、
菊を浮かべた酒を酌み交わしたりしていました。
呉茱萸(ゴシュユ)の実を入れた袋を肘に下げたり、
郊外の丘など高い場所へピクニックに出掛け
遠くをながめること(登高)も行われました。
日本には奈良時代ごろに伝わったとされ、
旧暦の9月9日は菊が咲く季節であったことから、
貴族の間で観菊の宴などが催されました。
ただ、陽の数が重なり、力が強すぎて逆に不吉ともされ
厄払い・邪気を払う行事ともされます。
菊は、邪気を払う力を持つ霊草と信じられ、
観賞・菊酒・菊湯などで、無病息災や不老長寿を願いました。
しかしこの時期は、古くからコメの収穫と重なります。
江戸時代に庶民にも菊を愛でるブームはありつつ、
どちらかといえばお米の収穫にまつわる風習に重きがおかれていたようです。
明治に旧暦から新暦になると、重陽の節句は季節感を失います。
新暦9月9日はまだ少し菊の見頃には早く、残暑も厳しいです。
重陽の節句は次第に廃れていき、現在はあまり知る人が少ない風物詩です。
五節句
- 人日の節句(じんじつのせっく)
1月7日 - 上巳の節句(じょうし・じょうみのせっく)
3月3日 *桃の節句とも - 端午の節句(たんごのせっく)
5月5日 - 七夕の節句(たなばたのせっく)
7月7日 *笹竹(ささたけ)の節句とも - 重陽の節句(ちょうようのせっく)
9月9日
重陽の節句を英語でいうと?(English)
Chrysanthemum Festivalです。
重陽の節句の過ごし方・食べ物
重陽の節句の食べ物を紹介します。
行事食・食べ物
- 栗ごはん(Chestnut rice)
秋の味覚の代表格である、栗を使ったご飯です。
栗は8月中旬ごろから出回り始めるため、
9月9日に栗ごはんを楽しむことも可能です。
栗ごはんを食べる風習は江戸時代から始まったとされており、
赤飯にクリを入れたり、焼き栗や煮物にも入れられました。
栗を進物として贈ることもあったようです。
庶民の間では重陽の節句を「栗の節句」とも呼んでいました。 - 秋茄子(autumn eggplant)
秋に収穫される茄子は「秋茄子は嫁に食わすな」
といわれ、春に収穫される茄子よりも
甘みが強く肉厚でおいしいとされます。
重陽の節句に秋茄子を食べるという風習は、
江戸時代からあったといわれています。
旧暦の重陽の節句は、現在の10月初旬だったため
秋茄子を重陽の節句に食べるというのは理にかなっています。
現在は9月9日のため、秋茄子というよりは夏茄子が多いです。 - 祝膳(celebratory meal)
重陽の節句は大人の女性の健康や長寿を願う節句であるため
「大人のひな祭り」とも呼ばれています。
そのため女性が好む華やかな料理を用意することがあります。
花びらを散らしたちらし寿司や、菊の花を模した麩菓子や羊羹などです。 - 食用菊(edible chrysanthemum)
菊は観賞用だけでなく、食べるものもあります。
菊の花びらや葉はサラダや和え物、天ぷらなどにして食べられます。
菊には殺菌・解毒作用があり、刺身にも添えられます。
花びらを砂糖漬けにしたりジャムやシロップにしたりします。
「くんち(9日)に茄子を食べると中風(ちゅうぶ・体調不良をさす)にならない」
という言葉があり、9のつく日にナスを食べる習慣があります。
長崎など九州で行われる10月の秋祭り「くんち(Kunchi)」も、
これに由来しています。
Nagasaki Kunchi is an autumn festival held at Suwa Shrine, the guardian deity of Nagasaki.
In 2024, it will be held from October 7th to 9th.
Official website
菊の着せ綿(Chrysanthemum dressing cotton)
菊に綿を被せておき、そこに溜まった夜露で肌を拭くと若さを保つことができる
という言い伝えがあります。
『枕草子』にも「着せ綿」の記述があり古くから行われたことがわかります。
この「着せ綿」は「練り切り(Nerikiri)」として
この時期の和菓子の題材として知られており
季節感を大切にする茶席で好まれます。
おはようございます☁️
本日はお天気が不安定な予報ですのでお気をつけてお出かけくださいね
只今お店では重陽の節句にちなんだお菓子をご用意しております🥰【重陽とは】陰陽思想では偶数は陰、奇数は陽の数とされており、陽数の極である『9』という数字が重なる日というところからきています pic.twitter.com/eQneuev0U1
— 川口屋 趣味の和菓子 名古屋【公式】 (@kawaguchiya_758) September 4, 2023
菊湯・菊枕
菊湯は、湯船に菊を浮かべて入ることです。
(putting chrysanthemums in the bathtub)
菊には殺菌・解毒作用があるだけでなく、血行促進やリラックス効果もあります。
菊枕は枕に菊の花びらや葉を入れて寝ることです。
目や頭痛の緩和効果があるとされています。
後の雛(のちのひな)
重陽の節句は大人の女性のひな祭りともいわれます。
(Adult women’s Hinamatsuri)
後の雛(のちのひな)
(秋の雛・菊雛)という風習が江戸時代にありました。
桃の節句(雛祭り)で飾ったひな人形を半年後、
重陽の節句で再び飾って健康や長寿や、厄除けなどを願います。
ひな人形を半年ぶりに出して、虫干しする意味もありました。
現在でも一部の地域で行われています。
菊合わせ
菊合わせとは、何人かで菊を持ち寄り、
その品種や色や形などを比べて優劣を競う行事です。
(Chrysanthemum viewing party)
菊の花を観賞するだけでなく、菊に詳しくなり、
仲間と交流する機会にもなります。
平安時代に貴族の宴で始まったとされています。
当時は中国から伝来した珍しい菊を眺め詩歌を作り、菊酒を飲んで厄払いや長寿祈願をしていました。
江戸時代になると、庶民にも菊合わせが広まりました。
各地で菊まつりや菊人形展が開催され、多くの人々が菊の花を楽しみました。
現在でも菊合わせや品評会が行われます。
- 参加者はそれぞれ自分が好きな品種や色や形の菊を持ち寄ります。
- 参加者は自分の持ち寄った菊について品種名や由来や特徴などを紹介します。
- 参加者は他の参加者の持ち寄った菊について質問したり感想を述べたりします。
- 参加者は自分以外の参加者の持ち寄った菊から一番気に入ったものを選びます。
- 参加者は自分が選んだ菊とその理由を発表します。
- 参加者は自分が選ばれた回数を数えます。
- 参加者の中で最も多く選ばれた菊の持ち主が優勝となります。
おわりに
現代の日本ではあまり馴染みがなくなった行事ですが、
明治以前には、季節の節目として親しまれていました。
気になる方は9月9日に菊を部屋に飾ったり菊酒を用意したりして
秋以降の健康を祈念するのが良いかもしれません。